怠けている、努力が足らない、と社会で軽視されがちな低血圧
少し前のニュースで、朝起きられなくて学校に行くのが辛い子の話が話題になった。
起立性調節障害というやつだ。
わたしは生まれつき酷い低血圧で…といっても、子供の血圧は病院では測ってくれないので、大人になってから発覚したのだが、平常時の血圧が上83•下43ぐらい。
病院でも医者に、「生きてるの?」と半分冗談で笑われるくらい低い。
会社の健康診断では、「こんなに低いはずがない。何かの間違いです。もう一回!」と、普段からこうですよと説明しても、看護師さんは聞く耳を持たない。
低血圧の朝
朝は頭痛と吐き気から始まる。
立ちくらみがあるので、目覚ましが鳴ってもすぐに起き上がることはできない。
そのまま意識を失ったり、頭をぶつけてしまう危険があるからだ。
目覚ましは15分おきに鳴らす。
予定がある日は、その3時間は前に起きて、少しずつ体を慣らすのだ。
音楽をかける。
激しいハードロックなどはダメ。クラシックや、ゆったりしたアニソンなどが中心。
少しずつ、声を出したりメロディーを口ずさんだりしながら、意識を覚醒させていく。
1時間。
目覚ましが鳴ってから起き上がれるまでにかかる時間である。
自分でも、心底もったいないと思う。
この時間を何か別のこと、運動や掃除、勉強など、やるべき事に費やせたらどんなにいいだろうと思ってきた。
完全にタラレバのないものねだりではあるのだけれど、朝目覚ましが鳴って、シャキッとすぐ起きることができたら、もっと偏差値の高い学校に入ることができたのではないだろうか、などとよく思ったものだ。
低血圧の人付き合い
こんな体質なので、朝から大きな声を出されたり、無理やり触られたりなどが苦手。
頭痛が酷くなったり、嘔吐や転倒の恐れがある。
そのため、付き合える人も限られる。
小学校の時、上級生が下級生を連れて近所の子供全員の家に迎えに来て、一緒に登校するという文化があった。
これが、とてつもなくストレスだった。
朝から話しかけられても、まともに応対できないのだ。
現在わたしの友人に、非常時以外で早朝からアポなしで訪ねてきたり、電話をかけてくる人は一人もいない。
常識のない人との付き合いは避けているからだ。
朝イチはまともに言葉を発して人と話せる状況ではない。
「あ」と発音したいのに、「い」と言ってしまうくらい、体が脳の指令を聞かないのだ。
そんな状況を馬鹿にされることも、好きでもない人に早朝訪ねて来られるのも、とてもプレッシャーだった。この頃から、集団生活が向いていなかったとは思う。
群れて行動したり、真の友情ではなく、その場にいない誰かの悪口で成り立っている集団が、どうしても好きになれなかった。
調理実習卵事件
その日は小学校で調理実習があった。
同級生のM子さんの電話で、寝ていたところを母に起こされた。7時前だ。早朝だ。最悪!
わたしは、起きてすぐの会話が無理だ。
相手の言っていることを理解するのに時間がかかるし、夢と現実の区別もついていない。
頭痛と吐き気が全身を襲う。
堪えながら会話をした。
(何故こんなに朝早くに?非常識じゃないか!?ありえないんだけど!)と思うけれど、言葉が出てこない。
最悪の気分で学校へ行くと、事件は起こった。
M子さん「麻歩さん、卵何で持ってきてないんですか!?」
わたし「???」
M子さん「卵持ってきてって、電話で言いましたよね!!???」
この後ちょっとした騒ぎになり、何で言ったのに持ってきてないんだお前!という女子特有の集団でのヒステリックな責めに遭い、言ったと言われても言われた記憶が全くないので、何でキレられるのか理解できず。でもきっと確実に言ったんでしょうねM子さんの中では。
その日は何とかやり過ごしたのですが、この一件が怖くなり、M子さんには卵を忘れた事の謝罪と、もう2度と早朝に電話しないようにお願いをし、その後苦手意識が芽生え、疎遠になりました。
言った言わないってトーク自体気分が悪いし、意識酩酊状態で話しかけてくる人って、悪用しようと思えば、こちらに不利な条件をわたしが飲んだ事にして、無理難題や、普段絶対にお断りするような提案を合意した!と迫ってくるから怖いんです。
卵の件は、わたしが悪かったと思いますが、好きな事や、されたら嫌な事は意識の有無に関わらず変わらないので、そこに付け込んで事実をねじ曲げてくる身の危険を感じさせる人とは距離を置きたいという結論に達しました。
本当の友達なら、相手が嫌がる事を、わざわざ選んでやらないはずですから。
ただ、この件はわたしが悪いと母にも言われました。
階段落下事件
これも田舎の小学校の悪しき文化だと、わたしは思っているのですが、今もあるのかなぁ…わたしがいた小学校は、夏休みになると、毎朝6時に公園に集合し、ラジオ体操に強制参加させられる、という低血圧いじめのような慣習がありまして。
参加するとスタンプがもらえ、新学期に提出するのですが、そのスタンプが少なかったりすると、だらしないダメ人間!何やってるんだお前!と全方向から責められるという謎のイベントがありました。
母はわたしが朝起きられないのをよく思っておらず、毎朝強制的に起こされ、参加させられました。
しかし、いかんせん朝が苦手な人間です。
そう、すっきりと起きられることもなく、6時に少し遅刻してしまうこともありました。
そうすると、リーダー格のいじめっ子が、「お前は遅れてきたから参加してないことにする!」と、スタンプをくれなかったりするのです。
わたしは無駄が嫌いです。
行動と報酬が結びつかないと、嫌な気持ちになります。
やった事を、やっていない事にされるのが、大嫌いです。
嫌な思いをして早朝に起きたのに、その努力が無にされてしまうのが、すごく嫌でした。
そんなある日の事。
ラジオ体操から帰ったわたしは、再び寝ようと、自室へ続く階段を登っていました。
すると、突然世界がくるくると回転しだしたのです。
次の瞬間、
どーん!
全身を強い衝撃が走り、動く事ができなくなりました。
家族が慌ててやってきました。
意識がはっきりしていないので、自分が階段から落ちたという事実を認識するのにも時間がかかりました。
幸い、スポーツをやっていたおかげか、運動神経は悪くなかったので、受け身を取って頭などは無事。
左腕に、虎型のアザができ、ジュウレンジャーみたいだ!カッコイイ!!と、自分では思っていたのですが、その日を境に家族の態度は一変しました。
「もうラジオ体操にいかなくてもいいよ」
え?
自分の中では笑い事だったのですが、家族の慌てふためき方が強く、オオゴトになってしまい、わたしの方がびっくりしたくらいです。
その日から、ラジオ体操に無理やり起こされる事もなくなりました。
ずっと、朝起きられないだらしない子扱いされてきましたが、極度の低血圧だと判明するのは、もっと大人になってからです。
わたしが守っている事や、思う事
これは、個人的なポリシーなのですが、低血圧なのは個人的な事なので、初対面の人や職場の人など、不特定多数の人には話しません。
ブログや、ごく一部の親しい人には、正直にお話しして、自分というキャラクターを知っていただくために伝えたり、配慮をお願いしたりすることはあります。
また、低血圧だからといって、遅刻をしても良い理由にはならないので、早く起きなければいけない予定のある日は、約束の時間よりもだいぶ前に起きるなど、事故を未然に防ぐため、自分なりに調整を行っています。
なので、社会人になってから、遅刻をした事は1度もないんですよ。
ただ、5時起きとかが嫌なので、一般的な社会人の方より、少し遅めの時間帯のお仕事を選ぶようにしています。
どうしても、学校も会社も、社会が朝方の人を中心に回っているので、朝が苦手だと、人生の半分以上損したような気持ちになりますが、大人になるまで生きると、自分に合った職業を選択するなど、実現可能な範囲で生き残る道を考えて選ぶ事もできます。
深夜の方が時給が高かったり、朝早い主婦の人が入れない時間•曜日の仕事を受ける事ができると、それが採用に繋がったりする事もありました。
できる事とできない事を明確にし、苦手だけど無理をしてでも他人に合わせたほうが良い事(遅刻をしない等)、本当に無理だからお断りする事を、分けて考えるようにしています。
残念ながら、これを食べたら、朝起きられるようになりました!みたいな経験は1度もないので、将来誰か頭の良い方が、そういうサプリみたいなの開発してくれないかな、と思うのでした。
もし、朝が苦手なお子さんがいらっしゃる方は、体質かもしれないので、あまり感情的にならずに少ない負担で起きられる方法を一緒に考えてあげてほしいです。
朝だよ~起きて~~カンカンカン!カーテンシャーーー!!!ってやる人は最悪です。
下手すると、ショックで心臓が止まってしまう事もあるのだそうですよ。
P.S. ラジオ体操の参加は任意にしてください。