やめた会社の話です。
わたしが働いていた会社に、元税理士事務所勤務の男性が入社してきました。
わたしは事務員だったのですが、人数の少ない会社で、営業以外の雑用全般をわたしが引き受けている感じでした。
事務は本来2名体制だったのですが、退職者が相次いだ関係で、わたし1人で回している状態でした。
ミスのないように気をつけて仕事をしていますが、ギリギリの状態で常に覚醒しているような感じだったので、いつかどこかで、気づかず重大な何かをやらかしてしまうのではないかという恐怖がありました。
そんな矢先、事務補佐として男性が1人加わるという話が舞い込んできて、あぁ、やっと落ち着いた環境で仕事ができる…と、その時は嬉しく思いました。
ただ、この彼、ちょっとくせ者だったんです。
~目次~
う~んと思う性格
俺は優秀だ!
はっきり言って、彼(ハセガワさん・仮名)の第一印象は最悪なものでした。
自身の境遇について話されたのだけど、話の内容はいつも同じ。
要約すると、
- 俺は優秀だ
- 税理士資格はないけど、税理士先生以上の働きをしていて、あそこ(前職場)の売り上げはほとんど俺のおかげ
- 俺は税理士先生よりできる男。評価されないから転職してきた
ある程度の愚痴やぼやきなら、わたしもするし、わかる。
でも、ちょっと度が過ぎるというか。
そんなに優秀なら、こんな所にいないで、さっさと税理士資格を取得して独立すれば?とは口が裂けても言えなかった。
明らかにバカにした態度
一応わたしの方が先に入社しているので、事務の仕事を教えるのはわたしの仕事。
でも、ハセガワさん、一回り以上年下の小娘に教わるのがはプライドが許さなかったのか、メモは絶対に取らず、わたしが説明をするごとに、わたしの説明を抑揚をつけて繰り返す。
最初は覚えるために復唱しているだけだと思って気にも留めなかったのだけど、ある時、覚える必要のない部分を繰り返された事で気づいてしまった。
この人、わたしの事バカにしてる…。
要は、覚えるためではなく、わたしが喋った言葉、イントネーションをいじめっ子のように大袈裟にマネして繰り返していたのだ。
これって無駄ですよね?
ハセガワさんと仕事するようになって気になったのが、帳簿の会計項目の記入を独自のものに省略する事。
それが、税法上正式なものなのかは,わたしにはわからないのだけど、前任者から引き継いだものと違うし、読めないため、正式な名称で書いてください、とお願いした事がある。
その時に返ってきた言葉が、
「それって無駄ですよね?」
また、この会社では、パソコンと、手書きの帳簿、両方にお金の流れを記録していた。
同じ内容を2箇所に記入するのって、二度手間だしいらないんじゃないか?と、社長に進言した事がある。
実は、社長も同じ事を思っていたのだけど、この会社では、古くからの戦力になってくれている社員の方が、おじいちゃん世代の方が多く、何度パソコン操作を教えても、覚えられなかったんだって。
で、無駄だとは思うけれど、パソコンが使えない社員も、自由に売り上げが見られるように、あえて二重の記載をしているんだと聞いて、理由があっての会社の方針なんだと納得していた。書くという行為は嫌いじゃないし、気分転換にもなりますしね。
で、ハセガワさん、それを聞いた上でも、
「でも無駄ですよね?」
どうやらこのお方、自分が共感できない事は全て「無駄」で片付けるらしい。
ネット履歴の閲覧
当時わたしはインターネット環境がなく、どうしても調べたい事があった。
社長と社長の奥様に許可を取って、定時後にインターネットを閲覧させてもらえる時間を確保する事ができた。
その日わたしは、取りたい資格の講座のホームページを閲覧してから帰ろうとしていたのだが…。
コートを取りに行った際に気づいてしまった。
ハセガワさんが、わたしの閲覧履歴を探って表示している事を。
別に見られてやましい内容ではなかったのだけど、気味が悪かった。
俺は社長代理だ!
ハセガワさんの業務改革はエスカレート。
ここでは事務員といっても、営業以外の雑用全般など、仕事内容は多岐に渡っていたため、帳簿の記入や受発注、電話対応や、棚卸し作業なんかもする。
棚卸しの時期がきた途端、ハセガワさんが突然、
「俺はそんな仕事はやらない!」
1人で棚卸しはできないので、昼休みに勇気を出してハセガワさんと話してみる事に。
そしたら、
「俺は事務員じゃなくて社長代理だ!ゆくゆくは社長代理業務をやらせてくれるっていうから入社したんだ!だからそういう雑用みたいな事はやらない!」
わたしは、事務補佐が増えて、今の忙しさが半減するよ、と言われていたから、仕事を続ける気持ちでいた。
でも社長とそういう話を事前にしていたのであれば、わたしの聞いていた事と違う。
後日、正式に話し合いの場を設ける事に。
退職を決意
その後、ハセガワさんの業務改革は進み、これも無駄ですよね?あれも無駄ですよね?と、わたしがやっていた仕事をどんどん潰していった。
あれもいらない、これもいらない、と一方的に切り捨てるハセガワさんについていけなくなり、また仕事を続ける意味もわからなくなり、わたしはついに退職を決意。
引継ぎをしてから辞めた。
「麻歩さんがいなくなっても、俺は1人で会社を回せるよw なんたって社長代理だからね!」
そう言われた。
もう会う事はないだろう。
これから何をしようかな~と、ニート生活に突入した。
早朝の来訪者
わたしの朝は遅い。
元々ひどい低血圧で、仕事をするために無理やり早起きして社会に合わせていたけれど、しばらくはその必要もなくなった。
と、言うわけで、目覚ましをかけず久しぶりにゆ~くりと寝ていたのだけど…。
最悪な音声が、この後響き渡る事に。
ピンポーン。
無視。
ピンポンピンポーン!
無視。
ピンポンピンポンダンダンダンダンダンダンダンダン!
「麻歩さん、いるんでしょー?ノートを、ノートを見せて!!今すぐに必要なんです!ノート持ってますよねぇ!?」
借金取りか。
わたしは基本、家の中で実用性重視で、はスカートをはいたりはしない。
そのため、そのまま外に出られない格好。
1人暮らしの女性宅に、好きでもない異性がドア1枚隔てた向こう側にいるというのが怖くてたまらなかった。気持ち悪いとさえ思った。
ダンダンダンダン!
やまないノック。
これは出るまで帰ってくれなそうだな、と思い、眠い目をこすり最低限の格好をして、インターホンに出た。
「会社の住所録で家の場所調べてきたんですよ!ノート!あの、ノートありましたよね?それ、下さい!」
調べてきたとか気持ち悪い…。
「ノート、ずっと書いてましたよね!?あのノートがないと仕事が全くわからなくて。今すぐここを開けてください!!」
わたしがいなくても仕事できるって言ってたじゃん…。
要は、いざ1人で動いてみたら、全く動けなくて、わたしが細かくメモしていたノートがあればできるから、それをよこせ、とそういう事らしい。
早朝で頭痛と吐き気、好きでもない男性に、突然家に押しかけられる恐怖で、心臓はバクバク。
早朝なので、言葉もまともに出てこず、わたしはノートを渡してその後何を話したのかよく覚えていない。
あとがき
職場が同じだったという理由だけで、住所を調べて家に来るって、何ハラかわからないけど、絶対やっちゃダメでしょ、って思う。
結局ハセガワさんと会ったのはそれっきりで、その後の事は知らない。
でも、社会人経験をある程度積んだり、様々な勉強をしてきた今のわたしなら、ハセガワさんの気持ち、少しわかる。
当時は効率厨なハセガワさんの性格が苦手だったけれど、効率よく物事を進めると、気持ちがいいし、最終的に得をするよね。
でも、性格的には合わなそうなので、もう二度と係わり合いになりたくないな、と思います。